2016年2月11日木曜日

ふぐとテトロドトキシン

  2月9日は河豚の日.(ブログアップが1日遅れてしまった。)

 寒いこの季節、フグ料理を楽しみたいけど、フグは毒を持つこともよく知られている.この毒の名はテトロドトキシン.テトロドトキシンは神経毒で,誤って食べると呼吸困難で死亡することもある。平成26年の統計ではフグによる食中毒は27件33名発生し1人が死亡となっている。
  
 テトロドトキシンは1960年代に日本で化学構造が解明されたが、煮ても焼いてもその毒性は消えず、また分子量が小さいので解毒剤を作ることもできない。仕方がないのでふぐの調理は免許制としてふぐ毒による食中毒を防ぐ手立てとしている。

 このテトロドトキシンが神経伝達の仕組みを解明するのに一役買っていたことを『神経とシナプスの科学』杉晴夫(著)講談社ブルーバックスで知った。いや、もしかしたら、たぶんきっと、学生時代に聞いていたのだろうけど、もう忘れていた。

 
1950年代にはその存在が疑問視されていたイオンチャンネルの実体が解明されるきっかけとなったのは、わが国におけるフグ毒の研究であった。 
『神経とシナプスの科学』杉晴夫(著)講談社ブルーバックスより 


 イオンチャンネルとはある特定のイオンが細胞内に入るための通り道のことだ。チャンネルはchannelは水路と言う意味なので、通り道を水路に例えられることがある。なお、channelの発音記号はtʃˈænlなので、日本語訳はチャネルと表示されることの方が多いと思う。


 私たちが何かを感じたり、体を思うように動かしたりできることさえもタンパク質のおかげだ。人体では、神経細胞のネットワークが、脳や神経系で情報をやりとりしている。やりとりされる信号の正体は、神経細胞の内と外での電位差(電圧)の変化だ。イオンの流れをコントロールして、この変化を生み出すのは、「水門」のように閉じ開きできるタンパク質である。
『人体は‘なに’で作られているのか』Newton別冊より
 
 
 
 テトロドトキシンはナトリウムチャネルにはまり込み、ナトリウムが神経細胞内に流入するのを阻害する。そのため神経の活動電位発生が起こらず、神経麻痺を引き起こすのだ。日本で研究がなされたテトロドトキシンだが、これを使っての活動電位の研究は残念ながら国内では進まず、米国に渡った楢崎敏夫によって諸外国に広められたという。
 
 などと、もたもたと書いているうちに日付が変わって11日。2日遅れの河豚の日の話題になってしまった。

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