2016年1月20日水曜日

太宰治「水仙」と蜆汁

 寒波到来。昨日は雪が舞い散る寒い1日だった。この寒さの中で咲く花と言えば水仙。可憐な白い花が冷たい空気の中で咲きほこる姿に、なんとなく昭和の匂いを感じる。偶然知った太宰治の小説「水仙」は、高校の国語の教科書(筑摩書房)にも載っていたことがあるらしい。
 ここでは小説の内容は割愛するが、太宰が新年にお金持ちの知人、草田惣兵衛氏の家に招かれたときの夫人、草田静子の様子を語るこんな場面がある。
僕は、もうそれ以上お酒を飲む気もせず、ごはんを食べる事にした。蜆汁しじみじるがおいしかった。せっせと貝の肉をはしでほじくり出して食べていたら、
「あら、」夫人は小さい驚きの声を挙げた。「そんなもの食べて、なんともありません?」無心な質問である。
 思わず箸とおわんを取り落しそうだった。この貝は、食べるものではなかったのだ。蜆汁は、ただその汁だけを飲むものらしい。貝は、ダシだ。貧しい者にとっては、この貝の肉だってなかなかおいしいものだが、上流の人たちは、この肉を、たいへん汚いものとして捨てるのだ。なるほど、蜆の肉は、おへそみたいで醜悪だ。僕は、何も返事が出来なかった。 
                                        引用 太宰治 『水仙』
 
 お酒のあとに蜆汁が出てきたのは、シジミが飲み過ぎに効くという言い伝えがあるからなのだろうか。こんなところからも、この日太宰が草田家で歓待された様子が伺えるな、と感じた。
 
 さて、シジミに含まれるオルニチンというアミノ酸が二日酔いを予防するとはまことしやかにささやかれているけど、本当だろうか。岡田正彦著『効く健康法 効かない健康法』には「ウコン、シジミ、牛乳を飲めば二日酔いにならない?」と題され、そのようなデータはなく、特段の効果があるかは不明とされていた。

 二日酔い予防には、アルコールを飲むときは食事と一緒にとること、水分をしっかりとること、そして当たり前すぎることだけど飲み過ぎないのが一番ということか。

 
 

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